「生き甲斐版」

期間限定で旅行パンフレットの編集の仕事をやっていたことがある。国内旅行のパンフレット。全国各地から様々な目的地に向けたおびただしい組み合わせのパンフレットを何十人もで手分けして編集する。
パンフレットは大きく分けて2種類あり、例えば関東の人が北海道へ行くというような遠方の旅行を「域外版」、大阪の人が京都へ行くというような近距離の旅行を「域内版」と呼び、職場ではこの言葉が始終飛び交っていた。それがあるとき脳内で突然「生き甲斐版」、「生きない版」と自動変換されてしまい、そこはかとなくおかしくなって、ひとり笑いをこらえるのに必死だった。ただ単にだじゃれが面白いという以上に何か仕事、もしくは人生に関する深い啓示のようにも思えて、特に「版」がつくことが輪をかけてとてもシニカルな感じがしていい。「生かされる者」「見放される者」がそれぞれ烙印を捺されて振り分けられるイメージ。オレはどっちだ？、、、なんてそんなことを面白がって、しんどかった編集の仕事を乗り切っていた。
まぁ、つまるところ「生き甲斐版」か「生きない版」かの烙印を自分に押すのは自分自身だ。置かれた状況に何かしらの喜びを見出せるならしんどくてもがんばれる。それでも自分が自分らしくいられないと感じるなら撤退する勇気を持つのもまたひとつ。要は自分の心の声に素直に耳を傾けること。例えばファミレスでメニューを選ぶなんてそんな些細なことでも、本当に自分が欲するものは何か、とちゃんと考える癖をつけることだと思っている。
幸せのかたちは自分で決めるもの、笑顔は自分で作るもの　なのだから。