目標は歌って踊れるデザイナー

イタリアのバラエティ番組を見る機会のあった方はいらっしゃるだろうか？歌番組にしても、ゲームやクイズ番組にしても、番組の冒頭には、必ずといっていいほど、サンバのカーニバルよろしき美脚のダンサーたちが踊りを披露してからスタートする。
僕は約15年間をイタリアで暮らしたが、そのうち約5年間、そんなテレビ局内のデザイナーとして働いていた。
初めのうちは契約社員として。そのうち正社員にしてやろうということになった。イタリアで外国人が正社員になるというのは結構厄介で、労働ビザだけでは不十分。２つの役所からそれぞれ書類を受け取る必要があった。仮に役所A、役所Bとするが、役所Aに行くと、役所Bの書類が必要だという。役所Bに行くと、役所Aのその書類が先にないと書類は出せないという。要するに、卵が先か鶏が先かという状態になり、たらい回しにされてしまった。しかたなく局の人事部の女性に泣きつき、どうしたらいいかと尋ねると、「心配ないわよ。テレビ局には特別枠があるのよ。」と言う。「なんですかそれは？」「....ダンサー！」そうなのだ。番組の冒頭で踊るダンサーを外国から雇い入れるときに使う特別枠があると言うのだ。
こうしてめでたく僕は、テレビ局の社員となった。
世界、地球、いや、宇宙広しといえども、ダンサーとしてテレビ局に入社したデザイナーは僕だけではないだろうか？
別にサンバのカーニバルみたいな格好をしてデザインの仕事をしていたわけではないけど。